「フォーミュラ1(F1)がつまらなくなった。」
そんな声が再び聴こえるようになってきました。
2021年に1ポイントを巡るチャンピオン争いをしていたのが嘘のように。
SUPER GTやインディカーは相変わらず毎年面白く、WECやスーパーフォーミュラは改善されて良くなってきています。
なぜF1はつまらなくなってしまったのか。
F1がつまらなくなった原因
- 予算制限
- テスト及び風洞制限
- チームメイトバトル無し
- 予測可能なレース展開
- オーバーテイクしやすいマシン
- 高い信頼性
- V6ターボエンジン(音の迫力が皆無)
コストキャップが裏目に
以前のF1は各チーム莫大な予算をつぎ込んでマシン開発をしていましたが、数年前から予算に上限が設けられました。
これにより、小規模チームが参戦を継続しやすくなり、チーム間の格差が減ると考えられていました。
しかし現実は逆でした。
確かに最下位と中段のギャップは減ったかもしれません。
一方で、予算に制限があることで、F1マシン開発の「先行逃げ切り」が加速したのは否定できません。
「F1はレギュレーションが変わったタイミングで速いチームはしばらくずっと速い」というのが通例で、2009年から2013年までレッドブルは速く、2014年から2021年までメルセデスは速かったです。
それでも、2012年には勝者が毎戦変わるような、各チームの実力が拮抗することもありました。2017年や2018年はフェラーリとメルセデスがそれなりに良い勝負をしました。
昔は「Bスペックカー」なるものもあり、シーズン途中から勢力図が変わることもありました。
予算に上限が設けられ、さらに、テストの回数や風洞の使用時間の制限なども重なり、莫大な資金を投入して車の性能を大きく引き上げるようなことが難しくなってしまいました。
チームはシーズンの早い段階で差が大きすぎると判断すれば、次のシーズンのマシン開発にシフトさせます。つまり、早々にチームは諦めてしまい、予算を来季以降の開発に集中させつつ、現実的な目標を目指すようになります。
フェルナンド・アロンソがプレシーズンテストで既に2024年のチャンピオンが誰かなのかを断言したのが確たる証拠です。
既に速い車をもっと速くするのと、車のコンセプトをガラッと変えてしまって一か八かで性能向上を狙うのとでは難易度が違いすぎるという話です。後者の場合、開発に莫大な予算とテストが必要になりますが、今の予算制限ではそれもできません。
全てが想定どおりに
昔のF1を見ていた方は、「最後まで何が起こるかわからない」というイメージがあるかもしれません。
しかし、現代のF1はチームが事前にシミュレーションした通りに進みます。
パワーユニットの信頼性も高くなったため、上位がトラブルでリタイアすることはめったにありません。
また、DRSを使ってストレートであっさりオーバーテイクできてしまうため、接触は混戦している中段~下位がほとんどです。
フリー走行の後にF1の公式サイトに分析結果が掲載され、どのチームが速いのかという予測が公開されているのですが、この精度が非常に高く、予選も決勝もほぼその通りになります。
当然、各チームはもっと精度の高い分析ができるので、自分たちが何位になれるペースがあるのかはわかっています。そして、無理はしません。
オーバーテイクが簡単すぎるF1はつまらない
2000年代から、F1はオーバーテイクが難しいと言われるようになりました。後方乱流により、ダウンフォースが失われて近づけないというのが原因でした。
2022年からのグラウンドエフェクトマシンでは、前の車に近づきやすく、オーバーテイクがしやすくなりました。
一方で、DRSを使われてしまうとディフェンスはほぼ不可能になりました。後ろの車を抑えられるのはモナコくらいでしょう。
1992年のモナコGPや2005年のイモラでは何周にも渡ってトップがバトルを繰り広げ、伝説となっています。しかし、そういうレースはもう起こりません。
2005年に鈴鹿でライコネンが後方から優勝した時も、オーバーテイクが難しいのがわかっていたから余計に凄かったし盛り上がりました。
2005年のサンマリノGPを見てみましょう。1位争いがこれだけ白熱していました、DRSがなかったので、「オーバーテイクさせない」技術も光っていました。
「前の車に近づきやすい+DRS」
今のF1はDRSを使ってラクラクと抜いていきます。
ポジションを死守することもレースの面白さだったはずなのに、今のF1にはありません。ドライバーから奪ってしまった。
遅い車を抜けないのはイライラするかもしれませんが、どうあがいても順位を守る術がないのもそれはそれで考えものです。
今のF1の車自体には大して魅力がない
「2002年や2004年はフェラーリが圧倒してたし、2013年もレッドブルが圧倒してたし、今と変わらないのではないか。」そういう思われる方もいるでしょう。
しかし、当時と今では一つ大きな違いがあります。
かつては、F1マシンが走っているだけで魅力がありました。
だからフェラーリが毎回優勝していても、セナかプロストのどちらかしか勝たなくても、たくさんのお客さんがサーキットに来場しました。
2万回転のV10バケモノエンジンを搭載し、凄まじいエンジンサウンドを轟かせて走る。見ているだけで面白い。
ちなみに2005年にBMWがモンツァで372km/hという凄まじい最高速度を記録しました。これはDRSがない時代です。今のF1はモンツァでもDRSを使ってもせいぜい340km/h程度です。
さらに、ミシュランVSブリヂストンのタイヤ戦争やレース中の給油といった要素。
そして、フェラーリ、ルノー、マクラーレン(メルセデス)、ホンダ、トヨタ、BMW、ジャガー、プジョー、フォードといった自動車メーカーの名前がグリッドに並び、華やかさが違いました。
以前はマシンもチーム毎に個性がありましたが、今のF1はほとんど同じような見た目です。レギュレーションが個性的なマシンを制限します。
ヒストリーF1がイベントで走ったときに、ピエール北川さんが必ず言うのが「やっぱり音が良い」です。
サーキットでその音を聴くだけで楽しめる時代でした。
「ちりとり」などと呼ばれた2012年~2016年の醜いデザインを考えれば、車の「見た目」はマシになりましたが、マシになっただけで特段良いわけではないんですよね。
チームメイトバトルもなければ・・・
2014年~2016年のF1はメルセデスが圧倒していましたが、チーム内でのバトルが激しかったというのが不幸中の幸いでした。
ハミルトンVSロズベルグ。
スペインGPでの接触のような事件もありました。
2014年で言えば、途中まではロズベルグがチャンピオンになりそうな気配すらあった。シーズン中盤ではロズベルグが20ポイント以上リードしていました。
チームメイト間の戦いすらないのなら、救いようがありません。
いわゆる「セナプロ」時代はマクラーレンが独走状態でしたが、それでもセナとプロストの2人がチーム内でバチバチに争っていたので見応えはありました。
FIAは時々判断を誤る
2005年に「タイヤ無交換」というとんでもないルールが導入され、たった1年で廃止されました。
2016年にはエリミネーション方式と呼ばれる、無意味な予選ルールが導入されましたが、すぐ批判を受けて廃止されました。
F1側の態度がインディカー関係者を怒らせ、「仲違い」状態になったこともありました。
2009年のレギュレーション変更で車の見た目が悪くなり、あらゆるF1ファンから不評で「ダサい」と言われました。
2014年に導入された「MGU-H」は、エンジンサウンドを台無しにしただけでなく、結局2026年から廃止されるという無駄なものでしかありませんでした。
なお、今のF1のオンボード映像のサウンドは、排気管のすぐ横にわざわざマイクをつけています。わざと音が大きく聴こえるように工夫しているのですが、音を売りにしたいならMGU-Hは要らなかった・・・。